ハートアンドアローのモアッサナイト
ハート&アロー(ハート&キューピッド)とは?
カット形状には数多くの種類がありますが、中でも光学的理論に基づいて最高の輝きを得られるよう考案されたものがラウンド・ブリリアント・カットです。
正しいプロポーションに加えて、丁寧な対称性(シンメトリー)と磨き(フィニッシュ)が施されると素晴らしい輝きが得られますが、そのような、とりわけキラキラと輝くモアッサナイトやダイヤモンドには、特殊な模様が出現します。
それが、「ハート&アロー(ハート&キューピッド)」*以下,ハート&アローと言われるもの。
ハート&キューピッドは、株式会社中央宝石研究所が商標権を有する名称で、世界では一般的にハート&アローと呼称されています。
キューレット側(尖った側)から見ると8つのハートに似たパターンが、テーブル側(平らな側)からはアロー(矢)の形に似たパターンが観察できることが、その名の由来です。
カットによって生み出される対称性と光の反射を最大限に活かしたものがこのハート&アローであり、その効果を最大限に得るにはカットの正確さと品質が非常に重要となります。
プロポーションが客観的に数字で評価されるのに対して、対称性はどうしても感覚的な、つまり主観に依った基準となってしまうことは否めません。
それゆえに、かつては例えダイヤモンドディーラーであってもその基準を正しく共有することは困難とされ、そこで光学的に光の反射像を調べる方法が考え出されました。
それが一般消費者にもより理解し易く、画像を用いて対称性が整っていることを提示できるハート&アローへと発展したと言われています。
ハート&アローのパターンは、一定範囲のプロポーションと一定水準以上の対称性があればカット評価自体がEXCELLENTでなくとも観察することが可能であり、あくまでも視覚的な対称性を伴った現象ではあるものの、光学的に考えた場合であっても、このパターンが出現するモアッサナイトやダイヤモンドにおけるその光学的対称性はかなり高いと判断することができます。
ハートとアローが浮かび上がる仕組み
“緑色部と黄色部のパビリオン・メインファセットから入射した光がテーブル面で反射して反対側に隣接した各ファセットに写し出され、緑色部と黄色部の各反射が合わさってハート形状に、一方、テーブル・クラウン側から入射した光は2回反射して反対側のパビリオン・メインファセットに映し出され矢印状パターンに見えるという仕組みです。
反射した各ファセットの像は、かなりの精度(角度・面積・形状など)で研磨されていないと綺麗に反射せず美しいパターンの形成にはならないことが理解して頂けるでしょう。 (引用:中央宝石研究所)”
上記引用内でも言及されていますが、僅かなファセットの研磨の差でも浮かび上がる像に大きく影響を与える為、他のカットと比較して技術的に難しく、どうしても希少で高価になるハート&アロー。
前述の通り、一定水準以上のカットが施されていればハートとアローの像の出現を観察すること自体は可能である為、ひとくちにハート&アローと言ってもその浮かび上がる像のクオリティにはある程度の振れ幅が存在します。
そこで、株式会社中央宝石研究所では独自の判断基準によって厳格にその認定を行なっており、例えばハートの形状やその大小差、各ハート像の先端位置のズレ、クレフトと呼ばれるハート上部中央の切れ込みやインクルージョンの影響などが判断基準として挙げられています。
またアローに対しても同様に、アローの形状が鮮明に確認できることを最低条件とし、加えて対称性や矢先の矢軸のズレなど、そのチェック項目は多岐に渡ります。
心揺さぶる光の演出
ハート&アローは、宝石内部に高い光のコントラストを作り出すことが知られています。
一般的に、我々人間の目は100%の光の反射ではなく、明るい部分と暗い部分の差、つまりコントラストが十分ある状態の光を美しく感じる傾向があり、明部とは対照的に影となって浮かび上がるハートとアローの演出が私たちの琴線に触れ、それが美しさとして高く評価されているのでしょう。