《6月》ふわりと輝く青が魅力の宝石、ムーンストーン。

誕生石について


1月生まれだからガーネット、2月生まれだからアメジスト・・・大多数の方は、誕生石という言葉を一度は耳にしたことがあると思います。誕生石のルーツは非常に古く、旧約聖書の時代にまで遡ります。当初は12種類の石を月替わりで身につけるという風習でしたが、生まれた月にちなんだ石を身につけるというものへと徐々に変化、その後、14世紀頃にポーランドに移住したユダヤ人たちの手によりその習慣が広められたと言われ、世界的にある程度の統一が見られたのが1912年のこと。アメリカの宝石商組合によって、聖書の記述をもとにしつつも、当時の時代背景を鑑みた改定を加えて選定が行われました。
日本では1958年に全国宝石商組合が選定を行い、アメリカ及びイギリスの誕生石をベースに、珊瑚や翡翠など、日本らしい特色を加えたラインナップとなっています。このように、誕生石はある程度世界共通の部分はありながらも、各国で少しずつ異なる特色を示しています。

ムーンストーンという石


6月の誕生石のひとつであるムーンストーン。人類とのお付き合いのはじまりは紀元前1世紀頃と言われ、月の満ち欠けに従い宝石の大きさが変化するという伝承より、ギリシャ語で月を意味する「セレテニス」を語源として命名されました。一般的には乳白色のものが多いですが、他にもブルーやオレンジ、グレー、レインボーなどの様々な種類があります(モノによっては、厳密に言うと”ラブラドライト”と呼称されることもありますが、多くの場合は一般的にいずれもムーンストーンとして販売・流通しています)。 宝石言葉は、「健康」「長寿」「純粋な愛」「富貴」など。 肌に馴染むような湿性の感触があり、シラー効果と呼ばれる、主にカボションカットされた鉱物内部の層状構造によって光の反射及び錯乱が発生し、表面に浮くような形でブルーやホワイトなどの強い光が現れることも多く見られます。 もちろんすべての個体においてシラー効果が見られるわけではなく、またその出方にも微妙な差があり、更にはインクルージョンによる各個体の個性なども明瞭で、自分だけのお気に入りを探す楽しみがある石でもあります。 モース硬度は6−6.5程度とそこそこの硬さはありますが、そこまでひっかきに対する強度が優れているわけではなく、またダイヤモンドと同様に劈開性があるため、取り扱いには多少の注意が必要です。打痕もやや、つきやすい傾向があります。

ムーンストーンの神秘性


手のひらで転がすと、月の満ち欠けを想起させるようなシラー効果の見られるムーンストーン。その柔らかな光は月明かりの下でも観察することが可能で、ヨーロッパでは古くから夜を見守る月になぞらえて旅のお守りや夜道のお守りとして、また身につけたり枕元に置くことで悪夢を見にくくなる効果があると信じられ、重用されてきた歴史があります。 電灯がない時代、夜の明かりと言えば月明かりであり、月の満ち欠けに伴う光量の多寡でシラー効果の見え方が異なることから、前述のような「月の満ち欠けに従い宝石の大きさが変化する」という伝承が生まれたのかもしれませんね。 この記事を書いているいま現在は、ちょうど折良くというべきか、皆既月食が世界各地で観測できる特別な日です。 見慣れた電灯を消し、月明かりの下でムーンストーンの優しい輝きを改めて観察してみるのはいかがでしょうか。