モアッサナイトの品質

「4C」とは?

あまり広くは知られていないかもしれませんが、モアッサナイトもダイヤモンドと似た形で、非公式ながらカラー(色味)、クラリティ(透明度)、キャラット(重さ)、カット(研磨)の、いわゆる「4C」と呼ばれるグレードで評価されることがあります。

【Carat(キャラット)-重さ】
キャラットは大きさではなく重さを表す単位です。1キャラット=0.2g、重くなるほどお値段が上がります。

【Clarity(クラリティ)-透明度】
クラリティは透明度を表す基準で、傷や欠け、そしてインクルージョンと呼ばれる内包物の大きさや場所、性質などを元に評価が決定されます。最高のVVS1から、VVS2、VS1、VS2、SI1、SI2、I1〜3となり、透明度が高いほど評価も高くなります。

【Color(カラー)-色】
ダイヤモンドの頭文字”D”を最高評価の完全無色透明であるとして、そこからE、F、 G…とアルファベット順に黄色みを帯び、またそれに伴って評価も下がっていきます。モアサナイトの場合、色味のある原料は無色透明の原料より安価になりますので、無色透明のものよりやや色味を帯びた色のルース(裸石)は比較的安価です。

【Cut(カット)-プロポーション】
その名の通り、カットによる輝きの美しさを定めた基準です。他の三要素が宝石本来の性質に基づいたものであることに対し、こちらは人の手で加えられた要素での評価となります。最上級をExcellent(光学的に理想)とし、Very Good(理想的)、Good(良好)、Fiar(やや劣る)、Poor(劣る)という5段階で評価されます。モアサナイトも生産工場側のカッティング技術により品質が変動しますので、それらも評価に反映される事が多いです。


モアッサナイトの品質評価には明瞭な国際共通基準が存在しない

ダイヤモンドがGIA(米国宝石学会)が定めた品質評価国際基準に基づき評価され、国際的に共通の効力が認められた鑑定書(書式は各鑑定機関により異なります)が発行されることに対して、モアッサナイトには現時点で明確な評価基準は存在しません。

GRAというモアッサナイト専門鑑定機関を謳う組織による鑑定書が一部で出回っていますが、各所において言及、時には検証されている通りその信憑性と信頼性は極めて乏しく、注意が必要である、というのが一般的な見解となります。


モアッサナイトのキャラット数計算は特殊

前述の通りキャラットとは重さの単位の事です。
ジュエリーは使用している石の総重量などが値段へと反映されることも多く、また通常、実際に使った石の重さを、石目刻印としてジュエリーに打刻することが一般的ですが、モアッサナイトジュエリーの販売では、そのジュエリーに使っているモアッサナイトの石目刻印をダイヤモンドと置き換えた時のダイヤモンド当量で打刻している業者も少なくありません。つまり、モアッサナイトのジュエリーはダイヤモンドの基準でキャラット刻印をされている事が多いというわけですが、当店はジュエリー協会の規則に従い使用するモアッサナイトの重量を精密秤で正確に計測し、その数字を打刻しています。

炭素のみから構成されるダイヤモンドと、炭素とケイ素の1:1化合物であるモアッサナイトはその比重が異なり、そのため同じカラット数で比較した場合、モアッサナイトはダイヤモンドと比較して約10-15%ほど軽くなります。つまり、 モアッサナイト石目の刻印を打つ場合、同じ大きさのダイヤモンドの当量として打刻すると、中石の大きさによっては実際のモアッサナイトの質量と大差が出る事もございます。(例:4.25ctのモアサナイトリング=同じ大きさのダイヤモンド当量を刻印にすると5ctとなり0.75ctの実質量誤差)これは消費者を騙すに等しい行為として当店は看做しておりますので、例えお客さまからダイヤモンド当量で刻印を打ってくださいと言われました場合でも、硬くお断りしております。

以下は
一般社団法人日本ジュエリー協会が定めた規定の一部を引用しています。

ジュエリー及び貴金属製品の素材等の表示規定(JJAより引用)

(1)宝石の質量の単位と数値 宝石の質量を表示する場合は、小数点以下第2位、又は第3位までの数値をカ ラットで表示する。その場合、 ct 記号は省略することができる。

(2)宝石の計測器と計測法 宝石の質量は、正確な計量器を用い実測法により求めなければならない。

(3)宝石の表示質量の値 表示する宝石の質量値は、実測値を超えてはならない。実測値を丸めて置き換 える場合、切り捨て法を用いる。


モアッサナイトのカラーとクラリティ

モアッサナイトは完全な無色透明ではなく、特定の照明下ではわずかにグレーに近い色味を含有しているケースが散見されます。また中には、ダイヤモンドにも似た黄色みが観察できる個体も存在します。ただし、このカラーについては昨今製造技術の進歩が目覚ましく、GIAのダイヤモンド評価基準におけるところのD(最高ランク・ほぼ無色透明)に相当するクラスのものを生成したり、また逆に色味をわずかにつけたものを作ったりという事なども可能となってきました。

次にクラリティについてですが、これも生産側の技術に依存するものとなります。通常当店ではルーペを使用した場合での肉眼検査において全く内包物が見られないもののみを選別して使用しています。
ただし、生産側によってはモアッサナイト特有の内包物があるルースや透明度が低いものを高品質として販売していることもありますので、注意が必要です。

品質基準は販売者次第

ここまで、モアッサナイトの品質やその評価基準について簡単にご紹介して参りましたが、前述のように、モアッサナイトには、権威が広く認められた鑑定機関が発行し、その品質を客観的基準からしっかり保証する鑑定書というものが存在しません。

そして残念なことに、モアッサナイトのそういった側面を利用して、実際の品質とは明らかに乖離した評価を騙って販売を行う不誠実な販売者が存在することも否定はできず、とそういったことが原因で、モアッサナイトという宝石それ自体が不当に評価されてしまっているケースもあるかもしれません。

モアッサナイトはダイヤモンド、特に天然ダイヤモンドと比較しますとかなり安価に手に入る宝石で、それが大きな魅力のひとつでもありますが、例えば先に少し触れました、カラー基準においてGIAの定めるところの”D”に相当する品質のルースは、技術の進歩により美しいものが生産されるようになってはいるものの、その他品質のモアッサナイトと比較しますと比較的高額でもあります。

皆様にとって素敵な日常のパートナーになるジュエリーを手に取っていただける様当店一同心より願っております。