モアッサナイトとは?

人工ダイヤ?モアッサナイト?

巷では、やはりどうしてもダイヤモンドの類似石として認識されがちなモアッサナイト。

一般的に、同様のポジションを占める宝石としては、天然ダイヤモンドが生成される過程を人工的に再現して製造され、化学構成も組成も天然ダイヤモンドと全く同様、”本物のダイヤモンド”としてアメリカ連邦取引員会お墨付きの「ラボグロウン・ダイヤモンド」、”ジルコニウム”というダイヤモンドに並ぶほどの硬さと、良く似た光の屈折率をもつ素材から作られた「キュービックジルコニア」、かの有名なスワフロフスキー製品でも知られる、無色透明なクリスタルガラスを素材とした「クリスタル」などが挙げられますが、これらのような、ダイヤモンド自体の人工的な再現や、その輝きを目指していたり、明確に”ダイヤモンドの類似石”として産声を上げた宝石たちに対して、人工モアッサナイトはそもそもとして全く異なる鉱物を目指して作り出されたものです。

 

“宇宙からの贈り物”

1893年、アメリカのアリゾナ州、キャニオン・ディアブロ隕石の衝突跡より、天然のモアッサナイトが初めて発見されました。発見者は、ノーベル化学賞受賞者でもあるフランスの科学者、アンリ・モアッサン博士。「モアッサナイト(モアサナイト)」という名称も、彼の名に因んで命名されたものです。

モアッサナイトは、ダイヤモンドの構成原子である炭素と、ケイ素の1:1化合物である炭化ケイ素から成る鉱物で、同様に炭素を含んでいることからダイヤモンドに近い性質を持ちますが、根本的に全く別のもの。炭素とケイ素は、酸素が存在する地球上では決して自然に融合することがなく、天然では前述のような隕石中にわずかにその素材が確認されるのみで、一般市場に出回ることはまずありません。

 

モアッサナイトジュエリーのはじまり

ダイヤモンドを超える、とも表現されるその輝きと、ダイヤモンドに比肩する耐久性を併せ持つ新たな鉱石、モアッサナイト。ですがそのあまりの希少性と、また隕石として大気圏を通過する際に発生する損傷から、とてもではありませんがジュエリーとしては活用できるはずもなく、そこでモアッサナイトを人工的に合成する研究が進められました。そして、それに初めて成功したのがアメリカのチャールズ&コルバード社です。

1998年頃よりモアッサナイトの販売を開始し、今現在でもその生成について世界最高峰の品質を誇っていると言われる同社ですが、そのアメリカにおける製造特許が2015年に有効期限を迎えたことを皮切りに、世界各国において人工モアッサナイトの製造が可能となり、高品質なモアッサナイト・ジュエリーが広く流通する今日に至っています。


徐々に、着実に注目されてきているモアッサナイト

その歴史の新しさからか、日本においてはまだまだ広く知られているとは言い難いモアッサナイトですが、本場アメリカではその知名度と人気は高く、一説によれば2020年当時、ニューヨークでは『今最もオーダーされるジュエリー』と言われていたほどです。

モース硬度ではダイヤモンドには一歩及ばないもののそれに次ぐひっかき傷への耐性の高さ、ダイヤモンドのような劈開性がないため耐衝撃性(靭性)に優れ、また、宝石の輝きを測定する基準の一つである光の屈折率ではダイヤモンドの約2.4倍。

そしていま、セレブリティなどからも注目を集めている大きな理由のひとつとして、モアッサナイトはその性質上、非常に”エシカルな宝石”であるという点が挙げられます。

「エシカル」とは、地球環境や人権などに対して倫理的、道徳的であるといった意味の言葉で、欧米諸国ではファッションはもちろんのこと、食事や趣味など幅広い分野において、持続可能でエシカルなライフスタイルへの意識が高まっています。

ダイヤモンドをはじめとした多くの天然石は、どうしてもその採掘に伴う周辺の自然環境破壊とは切っても切り離せず、また場合によっては鉱山労働者の健康被害、児童労働問題、時には内戦などの紛争資金へ繋がってしまうことさえもあります(もちろん、そういった諸問題に対して高い意識を持ち、十分に配慮されている天然石も多く存在します)。

それに対し、工場で製造され採掘の必要がないモアサナイトはそれらの諸問題とは無縁で、また人工であるが故に供給も安定しており、カラット数の大きなものや特殊な形状のカットも天然石と比べて手に入れやすいというメリットもあります。

宝石自体の魅力はもちろんのこと、人や地球環境に配慮する現代社会の流れにマッチしたジュエリーであるモアッサナイトを、ぜひ選択肢のひとつとしてご検討されてみるのはいかがでしょうか。